クリスマスイブ

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「明日の帰りは早いの?」



12月23日の夜、私は夫に尋ねた。



「分からない。そう遅くなることはないと思うけど」



ぼんやりとした返事が返ってきた。



クリスマスイブとは言え、今年の12月24日は平日であり、夫も私も通常通り仕事がある。



お互い仕事の量が変わるわけでもない。



だから帰る時間も普段とそんなに変わらないことが予想される。



「そう……早く帰ってきてくれたら嬉しいな」



私にはどうすることもできないので、そう言うしかなかった。



一夜明けて12月24日。



この日も私は自宅で仕事をしていた。



あらかじめ、今日やる仕事は決めてあった。



決して無理ではない仕事量。



普通にこなしていけば今日中に終わるはずの仕事量。



それでも今日はなかなか終わらない作業にいらいらしてしまう。



「あの人が帰ってくるまでに仕事を終わらせなければ」



焦りと、うまくできないことにいら立ちながらも、少しずつ仕事を進めていく。



時計を見る。



午後の2時。



「まだ時間はある」



残りの仕事を見て、どれくらいの時間を要するかを想像しながら自分にそう言い聞かせる。



デスクに置いてあったスマホが鳴る。



メールを受信したようだ。



チェックしがてら時計を見る。



時計が4時を指していた。



「あの人が帰ってくる前には、なんとか終わるだろう」



再びパソコンに向かう。



午後5時。



ようやく終わりが見えてくる。



あとほんの少し作業をしたら今日の仕事を終わらせられる。



少し疲れたのもあって、私はココアを飲むことにした。



温かいココアが注がれたマグカップが、パソコン作業で冷えた指先をじんわりと温める。



「今夜はどんな夜にしよう」



この時間になってもこれといった計画はない。



ただいつも通り夫と一緒に夕食をとり、いつも通りテレビを観ながらリラックスタイムを過ごし、いつも通りお風呂に入っていつも通り寝るだけなのだろう。



それなのにクリスマスイブというだけで、そんな夜が特別なものになる気がしてしまう。



だから私は昨日の夜、夫に帰宅時間を尋ねたのだ。



ココアを飲み干し、再び仕事に向かう。



あと少しで終わる。



集中して一気に片付けようとする。



夜の7時を過ぎた。



夫はまだ帰ってこない。



この日やる予定だった仕事は完了した。



「まだ帰ってこないかな……」



夫の帰りが待ち遠しい。



それはただ、今日がクリスマスイブだからでしかない。







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