電話

部屋の中に私の家族や友達が大勢いる。


皆思い思いに散らばり、そばにいる人との会話を楽しんでいた。


私も皆と同じように、隣にいた友達と最近あったことなどを話していた。


部屋の隅には固定電話が置いてあった。


今はほとんど使われなくなったであろう固定電話。


手垢がつき、黄ばんだ固定電話のことなど誰も気にも留めず、皆、各々の話題に没頭していた。


プルルルル……。


突然固定電話の呼出音が鳴った。


近くにいた私が電話を取った。


電話の向こうでは男の声が何かを言っている。


「何を言ってるんだろう?」


私は周囲の人たちと顔を見合わせた。


その瞬間、停電が起きた。


部屋の中が真っ暗になり、人々の狼狽する声が響く。


しかしすぐに復旧し、再び部屋は明るくなった。


「何があったんだろう?」


互いに顔を見合わせた。


「〇〇さんがいない!」


誰かが声をあげた。


確かに、どんなに探しても、先ほどまでこの部屋の中にいた〇〇さんの姿はなかった。


「どこに行ったんだろう?」


今度は私のスマホにLINEの通知が来た。


開いてみると部屋から姿を消した〇〇さんの死体が写された画像が送られていた。


「〇〇さんは殺されたんだ!」


「さっきの停電はなんだったんだ!」


部屋の中は混乱に包まれた。


プルルルル……。


再び固定電話の呼び鈴が鳴った。


私が出た。


電話の向こうでは男の声が何かを言っている。


「……この人は何を言ってるんだろう?」


私は首を傾げた。


その途端、また停電が起き、すぐに復旧した。


明るくなった部屋からは、今度は△△さんがいなくなっている。


そして私のスマホに届く△△さんの死体の画像。


プルルルル……。


電話が鳴り、男の声が聞こえ、停電し、復旧すると人が一人部屋からいなくなり、いなくなった人の死体の画像が私のLINEに送られてくる。


これが何度も繰り返され、一人、また一人と部屋から消えていく。


友人が消え、両親が消え、夫も消えてしまった。


皆殺されてしまった。


最後に私と妹の二人が残った。


プルルルル……。


電話が鳴った。


「お互いに消えないように、二人で手をつなごう」


私と妹は互いの手を固く握りあった。


私は電話を取った。


電話の向こうでまた男の声が聞こえる。


そして停電が起こった。


妹の手が、私の手の中から消えた。






……というところで目が覚めて、全てが夢だったと気づいた朝。


アメリカのホラー映画みたいな夢を見てしまいました。

「文章が書ける美女」能世雄妃オフィシャルサイト

愛知県で作家・モデル・ライターとして活動している 能世雄妃のオフィシャルサイトにようこそ。 「有意義な暇つぶし」をモットーに日々活動しています。